2014年10月15日水曜日


「川下から川上を見上げる」
 
木原秋好
 
1011()は、育った木が市場を通して建築材となるまでをたどる初めての講座になりました。川上から川下へ下る間に多くの人の手がかかり、形を変えていく様子を見ることができ、貴重な経験になりました。

この日最後に見学したのは多摩の木をふんだんに使って大工さんが仕上げたモデルハウス、思わず住みたいという気持ちになる無垢の木の家でした。中を案内されてびっくりしたのは、1階から2階へ通した太い柱には縦に一筋「背割り」といわれる溝が彫られていたことです。時間が経つと木が乾いて割れるので、初めから割れる場所を作っておくのだと言います。しかも木は割れても弱くなるわけではない、粘りの強さは変わらないという説明を伺って伝統技術の深さを知りました。

川上へ一つ遡って、こうした木材を作り出す工程を訪ねました。製材所では大きな電動鋸で丸太を挽き角材や板を作りだしていました。挽いたばかりの板は濡れるくらいにしっとりと水を含んでいます。乾くと板の形が変わるので適度に乾燥させるとの解説を聞いて、ここでも木の性質を熟知することがポイントであることを知りました。

もう一つ川上に遡ります。原材料になる丸太は都内でただ一つの木材市場である多摩木材センターからも運ばれてきます。野球場ぐらいの広さの市場は、前日競りがあったばかりで、まだ樹皮がついたままのスギやヒノキの丸太が整然と積まれていました。同じスギでもよく見ると太さや節の数が違い、芯の赤いものや黒いものがあります。そうだ!樹木は11本が違った環境で育っており、鉄やコンクリートのように均一ではないのです。こうした違いを熟知していないと本当の樹木の価値を引き出せません。

日本は木の国と言われてきましたが、こうした樹木についての知識や関心があってのことです。森林を守るには、伝統的な技術や知恵が廃れないようもっと樹木のことを知らなければならないと思いました。

 

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